「付き合うって言ったけど、羽田のジョークまでカバーするって言ってないよ。あくまでも自己責任でお願い。私は知らんわ」


ケータイ取り出して時間確認する。


「やばっ!出勤時間じゃん!羽田、私行くから!」


立ち上がって店の方向に向き変えた。

タッ…と一歩踏み込んだところで後ろから引っ張られる。



「なっ……!」


振り向きざまに近寄る羽田の顔にビクついて、思わずぎゅっと目を閉じた。




…ムニュ…と何かが口先に当たった。

羽田の指は私の顎関節を握ってて、首筋はまるで突っ張るかのように持ち上げられてる。




(んっ…⁉︎ )


顔の表面に生暖っかさを感じる。
飼い犬のペソが顔を舐めてる時と同じくらいの温度に、妙な違和感を覚えて目を開けた。


短めの睫毛が下を向いてる。
二重瞼の筋が一本、いや二本くらいあるかな。

眉毛はキレイに整えられてるかと思ったけど、そうでもない。
少しバラついてる感じ。でも、カタチは悪くはない。


………って、観察してる場合じゃないよ!


「やっ…何よ、これ!」


ドンッ!と腕を前に押した。
離れてった人を見て、一瞬体が固まる。



「は、羽田ぁ……」


な、何した⁉︎
今、私に何した⁉︎

ムニュっとした感触って何⁉︎
私の唇に、何を押し付けたの⁉︎




「初チューもらい!」


「えっ……」


は、初チュー⁉︎

……まさか……。