「まーちゃん。」

男の子の声がする。

え?まーちゃんって、私の小さいころのあだ名じゃん。

今では、恵那ちゃんしか使ってないけど・・・・。

振り向くとそこには、小さな男の子。

「きょうくん!」

気付いたら私はそう答えていた。

あ、恭君だ。小さくてかわいい。

でも、何で?

「これ、あげる!」

小さい恭君が、クッキーを差し出してくる。

え?何で?

「まーちゃんは、おせんべすきじゃないでしょ。ほんとうはクッキーが食べたかったのに、みんなのためにがまんしたんだよね?ぼくのくっきー、あげるよ。」

おせんべ?あ、せんべいか。

私の右手に煎餅が握られていることに気づく。

「あ、ありがとう・・・・。いいの、本当に?」

「うん!」

そう言って、私の手にクッキーを握らせて、走っていく恭君。

後姿を見ていると、視界が歪んで、意識が消える。