「じゃあ、失礼します。」

パタン、とドアが閉まる。

そっか、篠本先生は忙しいから、来れないんだ。

・・・・でも、ほかの家族の人は?

まあ、そこらへんは個人情報だから置いとくとして・・・・。

ここの病院、大きいな。きれいだし。

篠本先生はまた中に呼ばれたようだから、ここでまっとこ。

・・・・あ、もう、だめ。

別のこと考えようとしても、やっぱり無理だ。

恭君、ごめんなさい。

篠本先生にも言われてたじゃん。思い出したら、記憶が混乱するかもしれないって。なのに、何で言ったの?

自分の思いに気を取られて、相手のことを考えてなかった。

どうせふられるのわかってるから言うって、その程度のことで、こんなことを招いたの?

・・・・恭君のこと、ホントのホントに好きだったのに。

傷つくこともいっぱいあったけど、それでも、私は・・・・・。

何やってんだろ。ホント、私ってバカだ。

もしも恭君がこのまま目を覚まさなかったら?

そんな重いものを背負って、私は生きていけない。

でも、ほんとにそうなったら・・・・

だんだん、現実が見えてくる。

今まではまだ、飲み込めていなかったんだ。理解が浅かったって言うか・・・・。

ぞくっとした。

手足が震える。目の焦点が合わない。そして、心臓が早鐘を打つ。

頭に、いろんな様子が浮かんだ。

泣いている人・・・・黒一色の人だかり・・・・菊の花・・・・青白い顔をした・・・・・・

「うあ、あああ・・・いや・・・あうああああああああああ・・・・・・・・・・・」