目を開けると

冷たい檻に囲まれた保険所とはちがう、あたたかい場所にいた

ここはどこだろうか

「おはよ」

背後から聞こえた声にビクリと体を震わせる

彼女は僕の頭をそっと撫でた

嫌だ、やめろ、こわい、こわいこわいこわい

「ヴー」

唸り声を上げ威嚇する

その手に噛み付いてもいいのに僕は唸ることしかできなかった

保険所で撫でてくれた時も、今も、彼女の手はあたたかい

「私は優、大城 優。あなたの飼い主であなたの友達っ」

へへと顔を緩めふわりと笑う

“友達”………?

だって僕は犬なのに、人間の彼女と友達になれるわけがないのに

僕がもし人間なら、優と呼ぶことが許されるのだろうか

主従の関係ではなく、“友達”として笑いあうことが許されるのだろうか

彼女の手を握ることが許されるのだろうか