「あなたは自分の弱い心一切周りに感じ取らせないようにしていた。

泣かないようにしていた。
笑顔でいた。


その行動が全て、
壁を作る基になっていたということも知らずに」




……泣いたら、ダメ。
弱音を吐いたら、ダメ。





「ダメなものは…

ダメ、でしょう…?」




「……あなたは僕が思っている以上に、冷たい心をお持ちのようです。


あなたがいた世界と、この世界は違います。

あなたを取り巻いていた環境と、今の環境は違います」




「…意味が、分かりません…」




「…つまり、簡単に言いますと…



…………泣いていいのですよ、この世界では」




目頭がふわっと熱くなって、堪えきれなくなる。

ダメ。
ダメ、なのに。




「華やかな世界です、天界は。
けど、それは隠しているだけ。

本当は寂しき世界、冷たき世界なのです。



…秋奈様と、おなじですよ」




彼の手が伸びて、私の左頬を包んだ。




「…弱音を吐くことが、怖いのでしょう?

ですが、ご安心を。


あなたは決して1人ではないのですから。

だから、


泣いてくださっていいのですよ」