「…それほどあなたは、思い出したくなかったということでしょう。



人界でのことを」







「……………はい」







全て、当たっている。

彼の眼は、私のどこまでを見ていたのか。


私の眼が彼を映していない中、彼はずっと私という存在を影から見ていたのか。



そしてその不自然さに、気付いてしまったのだろう。

そして私と会った時に、確信したのだろう。





「秋奈様、あなたは心から天界を楽しんでいる。僕はそう信じています。


しかし、あなたは罪を思い出しては辛くなり、全てから無意識のうちに顔を背けていた。

人界での友に会いたいと思った時もあるかもしれません。


ただ、その感情も全て、罪を思い出した刹那消え去ったのでしょう」





「…はい」




「秋奈様、気付いていますか。

あなたは自分自身が気付かぬうちに、壁を作り出していたということに。

けど、あなたは別のことには気付いていたのでしょう。
自分自身の冷たい心が溶けないことに」




「…気付いていませんでした、ついさっきまで。

アマテラス様に…冷たい心を溶かすことができると言われた時、信じました。
けど、結局無理だったのですね。


私は壁を作っていたことさえ、
気付けなかったのです」




目頭がふっと熱くなる。

けど、堪えなきゃいけない。


そう思って、唇を噛む。