俺は、目の前の彼女から目を逸らしたまま、違うことを考えることにした。
上がった熱を冷ますために、全然関係ないことを考えよう、うん。

そうだ、そもそもこいつはブラックコーヒーが飲めないんだ。
お子様だよな。
俺から取り上げて持ってても、仕方ないだろうに。

「お前、ブラックコーヒー飲めないだろ?
持っててどうするんだって」

俺は言いながら、立花の髪をくしゃくしゃにかきまぜた。
彼女のふわりと柔らかい髪が、手に馴染む。

「やめてったら!
一応セットしてるんだから」

彼女は唇を尖らせながら、髪を手櫛で整えた。