これを、着るのか……?
目の前のライトグレーのタキシードを眺める。

あ、もしかして、ありかも知れない。

立花を目立たせたくなかったから、舞台に出るのは正直反対だったけど。
どうせ出るなら、逆に思いっきり目立ってやろう。

そうだ、そもそもカップルコンテストだ。
立花は俺のだと、周囲に見せびらかすにはもってこいじゃないか。

「ほら、着るしかないだろ?
まず試着だ、試着!」

おばさんがタキシードを手にした俺を、奥の部屋へと案内してくれた。