「最近ね、博徒崩れみたいな人が、声をかけてくるの」
お志摩から話を聞いたのはふた月ほど前。
お志摩は三日に一度ほど、隣町の医者のところへ父親の薬を貰いに行く。
そこで、これまでは見たこともないような怪しげな男に絡まれたのだという。
「初めは軽くからかわれるだけだったんだけど、最近ちょっと強引で。あんな人、この辺りにはいなかったのに」
不安そうに言うお志摩の頼みで、それとなく後を尾(つ)けてみると、なるほど、医者から出て来たお志摩に、遊び人風の男が声をかけた。
いかにも荒んだ感じの、危なげな男だ。
「おい、こんな往来で、娘さんにちょっかい出すんじゃねぇよ」
少し大きな声で言うと、男は驚いた顔をし、何か言い返そうとしたようだ。
が、周りに多くの目があることに気付き、大人しく引き下がった。
それが林太郎が男と会った一回目。
男もそう素直に忠告を聞き入れるようなタマではなかった。
次からは二、三人でお志摩に付きまとうようになった。
それで、何度か喧嘩したのだ。
相手は博徒崩れなだけあり、匕首片手に向かってきたが、正式に武術を身に付けた者ではなかったため、敵ではなかった。
さすがに五、六人になると手を焼いたが、斬り合うまでもなく追い払えたのだ。
いい加減に相手も諦めればいいものを、追い払えば追い払うほど闘争心が芽生えるのか、そのうち相手はお志摩のことはそっちのけで、もっぱら林太郎に向かってくるようになったのだった。
お志摩から話を聞いたのはふた月ほど前。
お志摩は三日に一度ほど、隣町の医者のところへ父親の薬を貰いに行く。
そこで、これまでは見たこともないような怪しげな男に絡まれたのだという。
「初めは軽くからかわれるだけだったんだけど、最近ちょっと強引で。あんな人、この辺りにはいなかったのに」
不安そうに言うお志摩の頼みで、それとなく後を尾(つ)けてみると、なるほど、医者から出て来たお志摩に、遊び人風の男が声をかけた。
いかにも荒んだ感じの、危なげな男だ。
「おい、こんな往来で、娘さんにちょっかい出すんじゃねぇよ」
少し大きな声で言うと、男は驚いた顔をし、何か言い返そうとしたようだ。
が、周りに多くの目があることに気付き、大人しく引き下がった。
それが林太郎が男と会った一回目。
男もそう素直に忠告を聞き入れるようなタマではなかった。
次からは二、三人でお志摩に付きまとうようになった。
それで、何度か喧嘩したのだ。
相手は博徒崩れなだけあり、匕首片手に向かってきたが、正式に武術を身に付けた者ではなかったため、敵ではなかった。
さすがに五、六人になると手を焼いたが、斬り合うまでもなく追い払えたのだ。
いい加減に相手も諦めればいいものを、追い払えば追い払うほど闘争心が芽生えるのか、そのうち相手はお志摩のことはそっちのけで、もっぱら林太郎に向かってくるようになったのだった。