「きっつ~~~。加倉も修羅場に居合わせたん?」
青竹から自分の杯にお酒を注ぎ、ついでに加倉の杯も満たした。
「……ああ。美子さんが野田と付き合ってるのもバレバレで、自主ゼミの空気もおかしかったけど……修羅場の後は、しゃれにならん状況だったぜ。美子さんも野田も恋愛体質だから、無理矢理引き裂かれても未練たらたら。……紫原も気をつけろよ。」
加倉はそう言ってから、杯をあおって、もう一度突き出した。
注げ、ってか?
酌婦じゃないっつーの。
青竹ごと押し付けて、私も杯を空にしてから口を開いた。
「私、別に、研究室で恋愛する気ないけど。」
加倉はちょっと笑って、私の杯にお酒を注いだ。
「紫原にその気なくても、既にさや当てが勃発してる。坂本さんと園田さんと野田。」
野田!?
思ってもみなかった名前に、咽せた。
「……だって、野田教授は美子さんに未練って……」
チッと、加倉が舌打ちした。
「その未練が消えたのは、研究会で紫原を気に入ったからだと思うけど。……そのせいで峠が割くったんだから、心して研究に励めよ。芸能人との恋愛に惚けてるなよ。」
「どういう意味?試験と研究で合否が決まったんじゃないの?」
「……さあ。でも峠は、無愛想なだけで優秀だぜ。まあ、ホントのところは野田しかわかんねえ。紫原のレベルはこれから。お手並み拝見。」
加倉の言葉が胸に刺さった。
他の男どものように気持ち悪い歓迎も嫌だけど、加倉の疑いもけっこうきつい。
でも、酒が入ってるとはいえ、腹を割って話してくれるのはうれしくも感じた。
「わかった。イロイロ教えてくれて、ありがと。これから、よろしく。」
そう言って、加倉の杯にお酒を注ごうと思ったけれど、青竹は既にからっぽ。
「すんませーん!お代わり!」
板さんにそうお願いしてると、お化粧を直した美子さんが戻って来た。
「え!2人で飲んじゃったの!?信じらんない!私もー!」
呆れる板さんが別の青竹入りの清酒を出してくれると、私は美子さんと加倉、最後に自分の杯も満たした。
「ほな、これからよろしく!かんぱーい!」
「汲み上げ湯葉、食べたい。」
板さんにお願いして、平たいお鍋に無調整豆乳を注いでもらい、カセットコンロで炙った。
「はい、一番湯葉は美子さんに。どーぞー。」
美子さんは、こういう食べ方は初めてらしいけど、一口食べて、うんうんと頷いた。
「美味しい!甘い!」
「そうですよ~。湯葉って甘いの。……なんで、関東の湯葉は美味しくないねんろう。」
「関東ってひとくくりにするなよ、田舎モン!東京でもうまい湯葉はあるぜ。」
不満そうな加倉に、ふた掬いめの湯葉をあげた。
「そ~お?水が違うしなあ。湯葉とお揚げさんは、やっぱり京都やで。」
……実家は滋賀だけど私はそう言い張った。
加倉は湯葉を食べて、押し黙った。
美味しいんだな。
私は満足して、次の湯葉をやっと自分の口に入れた。
とろ~りと甘い汲み上げ湯葉を味わってると、板さんがにがりをくれた。
「あ、今回は、いいです~。このままラストまで湯葉を楽しみます。」
そう言って、にがりを返した。
「何?水?」
「にがり、です。これ、入れると、お豆腐になるんです。」
「俺、豆腐、喰いたい。」
加倉が横から口を出した。
「私も~!すみませ~ん!このコンロとお鍋、もう1つお願いします。」
美子さんの注文に、板さんは肩をすくめて準備してくれた。
青竹から自分の杯にお酒を注ぎ、ついでに加倉の杯も満たした。
「……ああ。美子さんが野田と付き合ってるのもバレバレで、自主ゼミの空気もおかしかったけど……修羅場の後は、しゃれにならん状況だったぜ。美子さんも野田も恋愛体質だから、無理矢理引き裂かれても未練たらたら。……紫原も気をつけろよ。」
加倉はそう言ってから、杯をあおって、もう一度突き出した。
注げ、ってか?
酌婦じゃないっつーの。
青竹ごと押し付けて、私も杯を空にしてから口を開いた。
「私、別に、研究室で恋愛する気ないけど。」
加倉はちょっと笑って、私の杯にお酒を注いだ。
「紫原にその気なくても、既にさや当てが勃発してる。坂本さんと園田さんと野田。」
野田!?
思ってもみなかった名前に、咽せた。
「……だって、野田教授は美子さんに未練って……」
チッと、加倉が舌打ちした。
「その未練が消えたのは、研究会で紫原を気に入ったからだと思うけど。……そのせいで峠が割くったんだから、心して研究に励めよ。芸能人との恋愛に惚けてるなよ。」
「どういう意味?試験と研究で合否が決まったんじゃないの?」
「……さあ。でも峠は、無愛想なだけで優秀だぜ。まあ、ホントのところは野田しかわかんねえ。紫原のレベルはこれから。お手並み拝見。」
加倉の言葉が胸に刺さった。
他の男どものように気持ち悪い歓迎も嫌だけど、加倉の疑いもけっこうきつい。
でも、酒が入ってるとはいえ、腹を割って話してくれるのはうれしくも感じた。
「わかった。イロイロ教えてくれて、ありがと。これから、よろしく。」
そう言って、加倉の杯にお酒を注ごうと思ったけれど、青竹は既にからっぽ。
「すんませーん!お代わり!」
板さんにそうお願いしてると、お化粧を直した美子さんが戻って来た。
「え!2人で飲んじゃったの!?信じらんない!私もー!」
呆れる板さんが別の青竹入りの清酒を出してくれると、私は美子さんと加倉、最後に自分の杯も満たした。
「ほな、これからよろしく!かんぱーい!」
「汲み上げ湯葉、食べたい。」
板さんにお願いして、平たいお鍋に無調整豆乳を注いでもらい、カセットコンロで炙った。
「はい、一番湯葉は美子さんに。どーぞー。」
美子さんは、こういう食べ方は初めてらしいけど、一口食べて、うんうんと頷いた。
「美味しい!甘い!」
「そうですよ~。湯葉って甘いの。……なんで、関東の湯葉は美味しくないねんろう。」
「関東ってひとくくりにするなよ、田舎モン!東京でもうまい湯葉はあるぜ。」
不満そうな加倉に、ふた掬いめの湯葉をあげた。
「そ~お?水が違うしなあ。湯葉とお揚げさんは、やっぱり京都やで。」
……実家は滋賀だけど私はそう言い張った。
加倉は湯葉を食べて、押し黙った。
美味しいんだな。
私は満足して、次の湯葉をやっと自分の口に入れた。
とろ~りと甘い汲み上げ湯葉を味わってると、板さんがにがりをくれた。
「あ、今回は、いいです~。このままラストまで湯葉を楽しみます。」
そう言って、にがりを返した。
「何?水?」
「にがり、です。これ、入れると、お豆腐になるんです。」
「俺、豆腐、喰いたい。」
加倉が横から口を出した。
「私も~!すみませ~ん!このコンロとお鍋、もう1つお願いします。」
美子さんの注文に、板さんは肩をすくめて準備してくれた。