「紫原さん?彼氏って、中村 上総(かずさ)なの?え!?つきあってるの?去年の夏から?」
美子さんに問い詰められて、私は苦笑いしながらうなずいた。
「あ~~~~。だから、釣り合わないだの、役に立てないだの、ふさわしくないだのって、およそ現代的じゃないこと言ってたのね。納得!でも、いいんじゃない?今時、政略結婚もないでしょ。」
飲み込みの早い美子さんは、そう言ってから、私の手を両手で握りしめた。
「お願い!サインもらって!チケット取って!紫原さん、上総と結婚して!一生、仲良くしよう!」
……なんか……美子さん、かなり自己中かも。
「何?お前、芸能人のグルーピー?……しょーもな。」
対照的に、吐き捨てるようにそう言った!加倉!
私の闘争心にスイッチが入った。
「はあ!?お前にお前とか言われたないわ!……グルーピーて!古臭い言葉、使(つこ)てんなぁ!」
「……喧嘩するなら出てってくれ。」
板さんが静かだけど凄みのある声で加倉と私にそう言った。
「すみません。」
慌ててそう謝った。
加倉もまた、ばつの悪そうな様子で板さんに謝った。
板さんは満足そうにうなずき、青竹に入れたお酒をサービスしてくれた。
「固めの杯だ。……坊主、ちゃんと自分の目で見てから判断したほうがいいな。このきっついお嬢さんのどこがいいのか知らないが、上総の丈は遊びのつもりはなさそうだ。お嬢さんも。もうちよっと女らしくできないのかい?こちらのべっぴんさんみたいに。」
板さんの言葉に、加倉は頭を下げ、私は憮然とし、美子さんだけがキャッキャと喜んではしゃいだ。
「……ほんま、美子さんみたくかわいくなりたい。」
ガンガンとおごりの杯を重ねながら、そうつぶやいた。
「それは勘弁。」
加倉が顔をしかめた。
「……どういう意味?」
「ゼミクラッシャー。」
苦々しげに加倉がそう言うと、美子さんの目からホロリと大粒の涙がこぼれ落ちた。
ええ!?
「美子さん?あの……」
オロオロして、おしぼりを差し出す。
美子さんは、首を横に振って、自分のハンカチでアイメークが剥げないように、そっと涙を吸わせるように拭いた。
「ひどいわ。加倉くん。そんな言い方。私、そんなつもりなかったのに。」
「まあ、悪意はないですよね、美子さんはいつも。単に感情表現がわかりやすすぎて、周囲が大変なだけで。アイライン、広がってパンダになりましたよ。」
加倉くんがそう指摘すると、美子さんは慌てて化粧ポーチを取り出した。
「ちょっ!カウンターで化粧直しはあきませんて。トイトイレ!」
板さんの目が怖くて、私は美子さんにトイレのドアを指し示した。
化粧ポーチをつかんだ美子さんが席を立ち、パタパタと走ってトイレへ滑り込んだ。
「ゼミクラッシャーって、美子さん、何をしはったん?」
そう聞くと、加倉は顔をしかめた。
「4回生の時に野田と付き合いはじめて、去年、別れた。野田の奥さんが研究室に怒鳴り込んで来た。」
「え!?野田って、野田教授!?……美子さんの不倫相手って……マジで!?」
なんてこった!
美子さんに問い詰められて、私は苦笑いしながらうなずいた。
「あ~~~~。だから、釣り合わないだの、役に立てないだの、ふさわしくないだのって、およそ現代的じゃないこと言ってたのね。納得!でも、いいんじゃない?今時、政略結婚もないでしょ。」
飲み込みの早い美子さんは、そう言ってから、私の手を両手で握りしめた。
「お願い!サインもらって!チケット取って!紫原さん、上総と結婚して!一生、仲良くしよう!」
……なんか……美子さん、かなり自己中かも。
「何?お前、芸能人のグルーピー?……しょーもな。」
対照的に、吐き捨てるようにそう言った!加倉!
私の闘争心にスイッチが入った。
「はあ!?お前にお前とか言われたないわ!……グルーピーて!古臭い言葉、使(つこ)てんなぁ!」
「……喧嘩するなら出てってくれ。」
板さんが静かだけど凄みのある声で加倉と私にそう言った。
「すみません。」
慌ててそう謝った。
加倉もまた、ばつの悪そうな様子で板さんに謝った。
板さんは満足そうにうなずき、青竹に入れたお酒をサービスしてくれた。
「固めの杯だ。……坊主、ちゃんと自分の目で見てから判断したほうがいいな。このきっついお嬢さんのどこがいいのか知らないが、上総の丈は遊びのつもりはなさそうだ。お嬢さんも。もうちよっと女らしくできないのかい?こちらのべっぴんさんみたいに。」
板さんの言葉に、加倉は頭を下げ、私は憮然とし、美子さんだけがキャッキャと喜んではしゃいだ。
「……ほんま、美子さんみたくかわいくなりたい。」
ガンガンとおごりの杯を重ねながら、そうつぶやいた。
「それは勘弁。」
加倉が顔をしかめた。
「……どういう意味?」
「ゼミクラッシャー。」
苦々しげに加倉がそう言うと、美子さんの目からホロリと大粒の涙がこぼれ落ちた。
ええ!?
「美子さん?あの……」
オロオロして、おしぼりを差し出す。
美子さんは、首を横に振って、自分のハンカチでアイメークが剥げないように、そっと涙を吸わせるように拭いた。
「ひどいわ。加倉くん。そんな言い方。私、そんなつもりなかったのに。」
「まあ、悪意はないですよね、美子さんはいつも。単に感情表現がわかりやすすぎて、周囲が大変なだけで。アイライン、広がってパンダになりましたよ。」
加倉くんがそう指摘すると、美子さんは慌てて化粧ポーチを取り出した。
「ちょっ!カウンターで化粧直しはあきませんて。トイトイレ!」
板さんの目が怖くて、私は美子さんにトイレのドアを指し示した。
化粧ポーチをつかんだ美子さんが席を立ち、パタパタと走ってトイレへ滑り込んだ。
「ゼミクラッシャーって、美子さん、何をしはったん?」
そう聞くと、加倉は顔をしかめた。
「4回生の時に野田と付き合いはじめて、去年、別れた。野田の奥さんが研究室に怒鳴り込んで来た。」
「え!?野田って、野田教授!?……美子さんの不倫相手って……マジで!?」
なんてこった!