なるほど、美子さんは髪を綺麗に巻き髪にして、シャネルのカチューシャで押さえていた。
洋服も、いかにもなクラシックラインのワンピースに桜色の薄手の春コート。
「そう?普段通りでしょ?さ、行きましょ。紫原さん、自由が丘でいいのよね?」
美子さんは、いけしゃあしゃあとそう言った。
自由が丘って!
峠くんのバイトしてる割烹に行く気?
マジで!?
……上総(かずさ)んと鉢合わせしちゃうやん、それ。
「……あの、私、昨日も行ったんですけど……お店の前まで案内しますので、失礼していいですか?」
恐る恐るそう聞いてみた。
美子さんが眉をひそめた。
「ええっ!ダメ!一緒に来て!……加倉くんと2人で行って誤解されたら、私、立ち直れない!」
「はあ!?」
加倉くんがイラッとして、問い詰めた。
「いったい、どこ行く気っすか?近くじゃないんですか?」
「自由が丘の割烹。」
美子さんがそう言うと、加倉くんは、
「あ~?」
と、ちょっと変な反応をして見せた。
「美子さん……峠?」
加倉くんがそう聞くと、美子さんは頬を染めた。
「……やだ、加倉くん、知ってたの?峠くんのバイト先。もう!教えてよ。」
かわいく拗ねて怒る美子さんは、女の私から見ても微笑ましかった。
が、ゲイの加倉くんには通じないらしく、苦虫を噛み潰したような顔になった。
「冗談きっついわ。ちょ~、勘弁してやってくださいよ。峠は、美子さんには合わないっすよ。絶対!」
美子さんは明らかにムッとしたらしい。
「……加倉くんにそんなこと言われたくない。てか、加倉くんの毒牙にかかるぐらいなら私のほうがいいじゃない。まだノーマルよ!」
はあ?
どういう意味だろう。
……加倉くんは……いや、加倉くんも?
峠くんが好きなのか?
え~~~?
2人の痴話喧嘩のようでいて峠くんを取り合っているらしいやり取りを斜め後ろから眺めながら、電車を乗り継ぎ移動した。
あまりにも、ポカーンな相関図に、上総んに「来るな」と連絡するのも忘れてしまった。
てか、加倉くんはお店の場所を知っていたので、私が案内するまでもなかった。
……店に入ったことはないらしいけど、峠くんを迎えに来たことがあるらしい。
て!
深夜にバイト先に迎えに来るってことは……2人は互いの部屋を行き来する関係ってことか?
羨ましがって悶絶してる美子さんを後目(しりめ)に、加倉くんがお店の戸を開けた。
いつも通り、品はいいけど愛想はよくない板さんが重々しく迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。」
場違いな学生3人に対しても丁寧だけど、さすがに私と目が合うと苦笑された。
「こんばんは。また来ちゃいました。……峠くん、いますか?」
そうご挨拶して尋ねると、板さんは納得したらしい。
「ああ、あいつの連れかい?19時には来るから、ゆっくりしていくといい。上総の丈も同じ頃、来るってよ。」
板さんの言葉に、美子さんが反応した。
「え?かずさのじょう……って……」
あっさりバレてしまった。
私は照れ隠しというか、やけくそ気分で板さんに言った。
「上総ん、予約は1人でしたか?他の女、連れて来たりして。」
すると板さんはマジマジと私を見た。
「……いや。長いこと贔屓にしてくださってるけど、うちに女の子連れて来たのはお嬢さんだけだよ。」
「あ……そうですか……」
やばい。
頬が熱い。
ありえないほど、私は照れてしまった。
洋服も、いかにもなクラシックラインのワンピースに桜色の薄手の春コート。
「そう?普段通りでしょ?さ、行きましょ。紫原さん、自由が丘でいいのよね?」
美子さんは、いけしゃあしゃあとそう言った。
自由が丘って!
峠くんのバイトしてる割烹に行く気?
マジで!?
……上総(かずさ)んと鉢合わせしちゃうやん、それ。
「……あの、私、昨日も行ったんですけど……お店の前まで案内しますので、失礼していいですか?」
恐る恐るそう聞いてみた。
美子さんが眉をひそめた。
「ええっ!ダメ!一緒に来て!……加倉くんと2人で行って誤解されたら、私、立ち直れない!」
「はあ!?」
加倉くんがイラッとして、問い詰めた。
「いったい、どこ行く気っすか?近くじゃないんですか?」
「自由が丘の割烹。」
美子さんがそう言うと、加倉くんは、
「あ~?」
と、ちょっと変な反応をして見せた。
「美子さん……峠?」
加倉くんがそう聞くと、美子さんは頬を染めた。
「……やだ、加倉くん、知ってたの?峠くんのバイト先。もう!教えてよ。」
かわいく拗ねて怒る美子さんは、女の私から見ても微笑ましかった。
が、ゲイの加倉くんには通じないらしく、苦虫を噛み潰したような顔になった。
「冗談きっついわ。ちょ~、勘弁してやってくださいよ。峠は、美子さんには合わないっすよ。絶対!」
美子さんは明らかにムッとしたらしい。
「……加倉くんにそんなこと言われたくない。てか、加倉くんの毒牙にかかるぐらいなら私のほうがいいじゃない。まだノーマルよ!」
はあ?
どういう意味だろう。
……加倉くんは……いや、加倉くんも?
峠くんが好きなのか?
え~~~?
2人の痴話喧嘩のようでいて峠くんを取り合っているらしいやり取りを斜め後ろから眺めながら、電車を乗り継ぎ移動した。
あまりにも、ポカーンな相関図に、上総んに「来るな」と連絡するのも忘れてしまった。
てか、加倉くんはお店の場所を知っていたので、私が案内するまでもなかった。
……店に入ったことはないらしいけど、峠くんを迎えに来たことがあるらしい。
て!
深夜にバイト先に迎えに来るってことは……2人は互いの部屋を行き来する関係ってことか?
羨ましがって悶絶してる美子さんを後目(しりめ)に、加倉くんがお店の戸を開けた。
いつも通り、品はいいけど愛想はよくない板さんが重々しく迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。」
場違いな学生3人に対しても丁寧だけど、さすがに私と目が合うと苦笑された。
「こんばんは。また来ちゃいました。……峠くん、いますか?」
そうご挨拶して尋ねると、板さんは納得したらしい。
「ああ、あいつの連れかい?19時には来るから、ゆっくりしていくといい。上総の丈も同じ頃、来るってよ。」
板さんの言葉に、美子さんが反応した。
「え?かずさのじょう……って……」
あっさりバレてしまった。
私は照れ隠しというか、やけくそ気分で板さんに言った。
「上総ん、予約は1人でしたか?他の女、連れて来たりして。」
すると板さんはマジマジと私を見た。
「……いや。長いこと贔屓にしてくださってるけど、うちに女の子連れて来たのはお嬢さんだけだよ。」
「あ……そうですか……」
やばい。
頬が熱い。
ありえないほど、私は照れてしまった。