ちゃんと仕事をしていた…と思いたかった。

何かの間違いだと言い聞かせて完結させたのに、全くと言っていいほど仕事に身が入らなかったような気がする。

「お先に失礼します…」

「はい、お疲れ様です」

杉下くんに視線を向けると、彼はまだパソコンに集中していた。

今日の晩ご飯は何にしようかな?

今夜は特に寒いそうだからグラタンにしようかな?

そう思いながら会社から駅へと向かっていた時だった。

「――芽衣子!」

私の名前を呼んだその声に視線を向けると、
「――えっ…?」

目の前にいたその人物に、私はどう返せばいいのかわからなかった。