「芽衣子さん」

おばあさんは少し驚いた顔をした後、嬉しそうに笑った。

読んでいた本をテーブルのうえに置くと、
「和泉は?

和泉は一緒じゃないのかい?」

杉下くんがいないことに気づいたと言うように、周りを見回した。

「えっと、和泉さんは名古屋の方に行っています。

明日帰ってくるとおっしゃっていました」

そう説明をした私に、
「仕事なら仕方がないね。

芽衣子さん、遠いところから1人でご苦労様でした」

おばあさんが言った。

「いえ、仕事ではないんです…」

呟くように言った私に、おばあさんは首を傾げた。

「それは、どう言う意味で…?」

そう聞いてきたおばあさんに一瞬だけ理由を話すことをためらったけど、隠しても仕方がないので話すことにした。