今は差し当たって重要な問題ではない気がするが、何かしら関係があるのだろうか。質問の主旨が見えなくて、日下さんの表情に注意を払う。アームレストに肘を置き、こめかみに人差し指を、隣の親指を顎へと添え考え込んでいるようだった。

 日下さんが押し黙っていたのはほんの短い時間で、すぐにこちらへと顰めた顔を向ける。

「島野さんに部長、か。…柏木、その発注し忘れた奴が誰か調べられるか? 解ったら連絡くれ」

「はい…、システム入力されてるはずです。だけど、誰か解ったところでどうするんですか? 関係性がないように思えますけど…」

「平のスライディングウォールの発注日と、お前等が旭川に駆け付けた日が同じなのは偶然か? もっと言えば…、俺と工藤の出戻り初日。偶然だと思うか? 商品部が一枚噛んでいる可能性が、図らずもゼロではないとするなら?」

 問いかけとも呼べない想定を上回る疑問視をさらりと言われ、感情を消し潤いに欠いた日下さんの横顔を見つめる。


「…納得いくまでしらみ潰しに当たります」

 掌に食い込むほど、両手に捕まえたファイルを無意識に強く握り込む。喉の奥から絞り出した私の答えに、日下さんは満足そうに目元を揺らし表情を改めた。


「そういうこと。異質な素材を自由自在に調和させるのは俺らの得意分野じゃねぇか」


 商品部の誰かが一連のトラブルに関わっていて、それが作為的なものだとしたら。恨まれる覚えはもちろんない。はず、とは言い切れない何かがある。その何かっていうのが、みんなが口が悪くて怒りっぽい気質で、せっかちだってことが、誤解を生じさせる原因じゃなければいいと願いたい。


 システムで一括管理されている。見ればすぐ結果が出るだろう。それに、システムといえば適任者がいる。自分のところの製品は尚のこと、ログを調べてもらえば謎のスライディングウォールの件だって解るかもしれない。