『そんないい加減に仕事を任しているんだとしたら、私はできない仕事ばかりをあちこちにとっちらかしてます』

まだまだ私には力が足りないから、心にまで届くような言葉が出て来ない。

『柏木の言う通りだと、俺も思う。…まさか柏木に慰められるとは』

『そんなつもりじゃ…。私はそう思っただけで、いつも、さっきだって主任から慰められてるのは私です』

『うん、人には何とでも言えるんだよ。自分ってなると見失ったり、客観的に見れなくなるだろ? まずは自信を付けるのにはこうやって何度も足を運んで話を聞くこと。アシスタントは誰にやってもらうかすでに決まってたんだけどさ。なぽりでコースター見てマスターから話しを聞いた時、やっぱり柏木にして正解だったよ』

『…主任はすごいですね』

『何が?』

『主任の言葉を聞くと、やる気が出てきます。すごいと思います』

『褒めても何も出ないぞ?』

って、私のおでこにデコピンをする。

『痛っ…』

彼の髪の毛をいじる癖、それは照れ隠し。今だって髪をくしゃくしゃにしている。それを見るのが楽しみで、たまに困らせる。でも、最終的には私が困らされる。

『何、人の顔見て笑ってんの?』

『…いえ、何でもないです』

思わず笑い声を漏らした私は、小さくそう答えた。のと同時に、いきなり車が飛び跳ねて、身構えていなかった私の体が浮いて前のめりの体勢になる。

前方に突っ込みそうになって目を瞑る。ダッシュボードにぶつかる寸前に腕を押さえつけられ、びっくりして顔を上げれば、彼は『笑った罰』って茶目っ気たっぷりに歯を見せた。

『わざと…? 主任っ、驚かせないでくださいっ』

『悪路なのに捕まってない方が悪い』

そう言い除けられると私は困ってしまって、『すみません』と謝るだけだった。彼はそれを見て満足そうに笑い飛ばした。


帰ってから探した写真の他に、学生の頃のデザインブックが見つかった。余すことなく描かれていて、ふと懐かしくなって一枚一枚めくるうちに、徐々に思い出す。可能性を信じて夢を追いかけていたことを。

でも、写真はあまりの別人さにやっぱり見せられないと、箱にしまい込んだ。