美術は陶芸は面白かったけど人物画が苦手で、舞台の分野は演技がどうしても出来なくて、演技もメイクもあまり上達しないまま終わり、特にCADとコンピューターグラフィックは技術が追い付かず、肩が凝るだけだった。
その中でも、インテリア設計と服飾は似たような感覚を覚え、どんどんのめり込んでいった。友達と競ったコンテストとショーは、考えるだけでわくわくして睡眠時間を削るほどだった。一緒に競った友達と、勝ち取った優秀賞は他にもいた。
賞は友達と肩を取り合い喜んで、本当に嬉しかった。その喜びは知識を取り入れ臨むほど、いつしか劣等感を抱くようになった。
[なぽり]で初めて声を掛けられたあの時、『勿体ないと思うよ、それをさらけ出さないって』と、彼に言われた言葉。
元々ないものをどうやってさらけ出せばいいのか、見い出せなかった。
言われた通りに淡々と仕事をこなしていくだけで、学んだことを何一つ生かせられていない。コンプレックスというしこりは取り除かれることなく大きくなっていった。
『生かすのに力なんていらない。マスターが話してくれたんだけど、その学生たちがまた、なぽりに来たんだって。賞を取った人たちの飾られた写真を見て言葉が出なかったってさ。どれもレベルが高くてどれも素敵で私たちも頑張ります、って。それと、綺麗だったって言ってたらしいよ』
どんな物を造ったか記憶は薄く、覚えているのは楽しかったってことだけ。
帰ってアルバムを引っ張り出せば、アイデアが次々に浮かんできてデッサンばかりしていたあの頃の感覚が蘇るのだろうか。
『みんな自分の持っている力を最大限に引き出して一つの店舗を造り上げていく。柏木は少し自意識過剰なくらいがいいと思うよ。それと、インテリアコーディネーターの資格持ってるなら無理じゃないだろ?』
『資格と実践は違います』