『主任は他にも仕事がある中での2日かもしれないですけど、私は他に特別抱えていないので…。やっぱりもう1回チェックしてからにします』

『何回チェックするんだよ? その顔は3回目だな』

引っ込めたスプーンを口に放り込んで、得意満万な顔を見せた。やっぱり敵わない、やることなすことバレバレだった。
 
『う、主任。なんでも分かっちゃうんですね』

『柏木の行動パターンはお見通し。あのパーティション、体当たりされないようにガラスのに変えてもらわないとダメだな? あれだけは予測不能だから』

『…はい。いつも、ぶつかってしまってすみません…』

合わす顔がない私の前にカレー皿と、その横に小さな硝子の器に苺が二つ置かれた。

『お待たせ、これはサービスだよ』

『え、いいんですか? ありがとうございます。あ、マスター。これ、新しいの縫ってきました』

『いつもありがとう、コースターがかわいいって若い女性に人気なんだよ』

『それならよかった。ちょっと心配だったんです、どうしても手作り感あるから。大量生産はできないけど。また、縫ってきますね』

『え? これ柏木が作ったコースターだったのか。このタグは?』

自分の水の入ったコップの下に敷かれたコースターを手に取って、裏返したり横から見たり、また表にひっくり返したり、ありとあらゆる角度で眺める。

『タグの注文は高いので無地のタグに刺繍したんです。今使ってもらっているのがボロボロになってきちゃったので、新しいのと交換してもらおうと思って』

麻布を2枚合わせ、ここのテーブルと椅子、照明を刺繍で描いて[なぽり]のタグを付けただけのコースター。

『このタグが手縫い…』

『ガタガタだから、あまり見ないでください』

そんなにまじまじ見られるとなんだか恥ずかしさが益してくる。彼の手からそれを奪い、元あった位置へ戻しコップを置いた。