一方男子達のほとんどは、「マジで⁉︎」「スゲェ!俺も見てぇ!」と興奮していた。
敬太も目を輝かせている。
絵留のアメリカ旅行の話なんかもう忘れてしまったかのように、私の作り話でワクワクしているようだった。
敬太は私の腕を掴んで立ち上がらせ、こう言った。
「霞、女子トイレに見に行こう!
どの個室? 案内して!」
「私、怖いよ……」
「大丈夫だって、俺が隣に付いてるから。
興味ある奴、俺と一緒に来いよ。確かめに行こうぜ!」
その時、予鈴がなった。
朝のホームルーム開始まであと5分しかないのに、うちのクラスの半数がゾロゾロと女子トイレに向かっていた。
「誰もいないよなー?俺、男だけど入るぞー。
入ってマズイなら、今言えよー」
敬太はそう言ってから、女子トイレの入口ドアを開けて先頭で入っていく。
私は敬太と手を繋いでいた。
怯えてみせる私の手を、敬太から握ってくれた。
私の手よりもずっと大きくて、男らしい敬太の手……。
嬉しくてたまらなくて、ニヤけそうになるのを我慢するのがちょっと大変だった。