「霞⁉︎ ど、どうしたの?」


絵留は私に飛びつかれて慌てていて、琴美も梨沙も、敬太もその他2名の男子も、驚いてから何があったのかと心配してくれた。


私はブルブルと震えてみせて、みんなの顔を順番に見る。


それから、わざとどもりながら、こんな作り話をした。



「で、出たの……。
おおお、お化けかな……よ、妖怪なのかな……。

トイレに入っていたらね、隣の個室から……」



トイレの個室に入っていたら、視線を感じた。

ふと左上方を見ると、そこには不気味な物体が。


黒くてドロリとしていて、輪郭がぼんやりとしている得体の知れないナニカ。

そのナニカが、隣の個室から壁を乗り越えて、私のいる個室の方へとゆっくり進入してこようとしていた。


そんな作り話をしてから、絵留を離して床にへたり込んでみた。

震えながら涙を流して怯えてみせる私を、気づけばクラス全員が囲んでいた。


絵留も琴美も梨沙も、他の女子達も、『ええ、嘘でしょ?』『何かの見間違えじゃない?』と言いたげな顔をしているけど、

私の演技力に押されて、信じ難いという気持ちを口に出来ないみたい。