今は部活に入っていないけど、中学の頃は演劇部だった私。

その時の経験をフルに生かして、悲鳴を上げながらトイレから飛び出した。


「キャアアァァーーッ‼︎」


廊下にいる生徒全員が、驚いた顔をして私に注目する。


舞台に立った時の感覚が蘇る。

お客さんがつまらなそうにしていたら私も演じる気がなくなるし、逆に笑ったり泣いたり息を飲んだりしてくれたら演技にも力が入る。


私の悲鳴で廊下にいる生徒達はビクッとして立ち止まったり、咄嗟に壁際に寄って身を守ろうとしたりと、いい反応。


そんな観衆達の反応を見て、私のプチ女優魂に火がついた。


悲鳴に加えて目に涙まで浮かべ、廊下を走って自分の教室、2ー5に駆け込む。


私のただならぬ様子にクラスメイト達も驚いて、一斉にこっちに注目した。


「助けてっ‼︎」と叫んだ私は、それまで友達の輪の中で得意げにアメリカ旅行の話をしていた絵留に抱きついた。