香織は高等部に通っている。
高校三年生は、もはやあらゆる魔導師のカリキュラムを受けてきたエリート達であった。
魔導師組合の真の思惑は、超A級妖怪である不老不死種族の吸血鬼を、生徒達に見せる事であった。
それこそ、何十年に一度こんな機会はあるかないかである。
そんな貴重な体験を、今回の高等部の三年生は得られたのだった。
無痛覚で、しかも再生して、本体である鉄観音がやられない限り消滅しない。
現代日本の埋葬習慣である火葬が主流になっている今、完全体の遺体はそうそう見つからない。
香織に対する他の生徒や、教師の接し方は、悲しいかな、実物標本なのであった。
聖ルボルグ学園高等部三年生のクラスは、二クラスである。
一組は学術系魔導師。
簡単に言えば、
文献の研究や歴史、精霊と式神、自然を応用する魔導である。
二組は科学系魔導師。
大気、物質、物理を応用した魔導。
緻密な計算の上に、詠唱や媒体に記憶させる技術を開発する。
二つの魔導を組み合わせる事が出来るのは、限られた魔導師のみである。
過去に数人しか存在しない。
戦時中、兵器利用させようとした動きもあった。
しかし、時の魔導師組合総帥は頑なに拒絶する。
それは各国の強烈な倫理によるものだった。
つまりは人間の戦争と、魔導師を導入した魔導戦争が組み合わされる事によって、
世界人類が完全に滅亡してしまう可能性があったからだ。
香織のクラス説明で、人類滅亡にまで触れてしまった事は置いておいて、
香織はクラスメートの話題の中心にいた。
因みに香織は一組である。
二組では、下手をすると香織が爆発され兼ねない。
一組でも変わらないかも知れないが、奇抜さは二組と比較しても随分違った。
元々、魔導師たる資質のある人間は、人や物に対して、少し興味の持ち方が違う。
香織に対しても同じであった。
彼等(魔導師)は、元々友人や友達と言う概念は薄い。
ただ、香織に対してクラスメート全員が強い興味を持っていたのは事実だった。
「な、何なのこのクラス・・・」
一組で挨拶をする時、余りの熱気で香織はうろたえた。
あきらかに、
通常の高校生の空気では無かったからだ。