「……え。」
「よう。」
学校から帰ってきて自分の部屋に入った瞬間、ふつうならいないはずの人がいるけれど見慣れた景色が広がる。
「よう、じゃないでしょー!なによまた勝手に人の部屋に入って!」
「おばさんがいいって言ったんだもーん。」
うちのお母さんはいいって言うに決まってる。
だって……、
この人の家に堂々と入り、人の部屋で堂々とくつろいでいるやつは、私の幼なじみだから。
……津田悠真、私と同い年の16歳。
ほんとのほんとに昔っからの付き合い。
なんたって親同士が仲がいい。
それに家も近い……近すぎる。
まあ幸いお隣さんでもなくお向いさんでもなく、言うならばお斜めさん。
私の家の斜め右前の家が、こやつの家。
「お前なぁ、こんな乙女なこと現実に起きるかよ?」
悠真が手にしているのはついこの前買ったばかりの新しいマンガ。
なんとなんと最終巻。
とんでもなくハッピーエンドだったんだよねぇ。
よかったよかった。
「……ってなに勝手に読んでるの!」
「いいじゃん別にー。お前のもんは、俺のもん?笑」
にかっと笑う悠真にいらっとする。
「ふざけてんの?」
「うははっ、楽しいなー」
なにが!
こっちは毎度毎度迷惑してるっていうのに。
……とは言いつつも、本当は嫌じゃない、んだと思う。