春、俺は中学を卒業して高校生となった。新品のブレザーに今まで着けることすら無縁だったネクタイに新品のバッグ。
全て新しい、高校生活の第1歩目だ。
『それじゃ行ってきまーす!』
とドアを開け駅に向かおうとした。
すると、ガチャっとうちのドアが開く音がした。
『兄貴!もういっちゃうの?』
俺の妹だ。
『あぁ。わるい、中学と違って高校は遠くなっちゃったからもう一緒に学校行けないんだ、ごめんな?』
ここで少し紹介しておこう。
俺、桜井太陽/十五歳/高1
妹、桜井月(ルナ)/十四歳/中2
妹は、中2になっても俺にべったりだ。いわゆるブラコンというやつだ。
『むぅ、』
月はほっぺを膨らませて
『そっか…でもしょうがないよね、兄貴も高校生なんだから』
月は俯きながらそんなことを呟いていた。
『本当にごめんな、その代わり俺、部活入る気ないから毎日早く帰ってこれるぜ!』
月は顔を勢いよく上げ、
『マジ!やったー! 絶対だからね!』
内心、他にこんな妹いるのかと思った。
『あ、やべっ!ごめ!もういくわ!遅刻しそうだ!』
月は少し悲しい顔をし、しかし無理やり笑顔をつくるようにして、
『行ってらっしゃい!兄貴!』
月は大きく手を振って見送ってくれた

月と分かれた後、俺は最寄りの駅に向かった。中学の頃とは違い電車通学なので、やはり少し緊張する。
駅に電車が到着するまで五分。椅子でまつことにしよう。
『はぁ、これから毎日通えるかなぁ』
心の中でそっと呟いた。呟いたところでどうにかなる話じゃないのだが。
 辺りをみまわしてるとある少女が目に飛び込んできた。
綺麗な黒髪に凛々しい顔立ち、触ったら壊れてしまいそうな細い体、誰が見ても美人と思えるそんな少女だった。よく見ると同じ学校の制服じゃないか。
『同じ年かな?』
そんなことを思ってるうちに電車が到着した。