「どうしてって、」
 気付いた時にはもう彼女の瞳からは涙が溢れ出していて、俺はぎょっとしてしまった。やばい。泣かせた。でもどうして?どうしていきなり泣くんだ!いや、俺が何か地雷を踏んだに違いない。だが、地雷が爆発してしまったら、もう俺にはどうすることもできない。泣く女子をどうこうできたことなんか、自慢じゃないが一度もない。

「非力だからですか?すぐ泣くからですか?女だとちゃんと出来なくても許されるんですか?」
 俺を睨みつけて言うと、悔しそうに唇を噛んだ。泣いている自分が悔しいのか。目を見開いて、涙を堪えようとしているが、こんな真っ赤な目で睨まれたら、俺はもうどうしたら良いのか、全く分からない。

「そそ、そんなこと言ってない。多恵はよくやってるぞ。その辺の男子よりずっと賢いし、がんばってるし、センスだってある。すごいと思う。本当だ。」

 慌てて言った。言い逃れでも、でまかせでもない本心だったが、俺の言葉は彼女の心には響かなかった。

「先輩まで、、先輩までそんなこと。」
そんなことって言われても、なんでそんなことで泣くのかのほうが、俺には分からない。
「もう、ほっと、ほっと い いて、くっだ、ざぁ ぃっ。」