プロジェクターを片付け終わった彼女に声をかける。
「今日はこれで終わりか?」
「はい。」
「よし、じゃあ、帰っていいぞ。」
「はい。」

着替えるために倉庫へ入った彼女を見届けながら、部屋の隅にいた川村に尋ねる。
「今、お父さんって言わなかったか?」
川村は苦笑いをした。
「さぁ。」
「言ったよな?」
「単に間違えたんでしょう。本人気付いてないみたいだし。」
「やっぱり、言ったよな。。」
「彼女、そそっかしいから。」

 ため息が出た。彼女が俺を信頼して、懐いてくれていることは嬉しい限りだ。だが、『お父さん』と言われて嬉しい男などいるわけがない。