日誌を読み返して、部室の戸締まりをしていると、神井が戻ってきた。
「スミマセン。もしかして待っててくれたんですか?」
「いや、さっきまで川村達もいた。日誌を書き終えた所だ。」

 神井は柔らかく笑った。やる事が大胆すぎて浮いてる感じがないでもないが、好意を素直に受け取れる、真っ直ぐでいいヤツだなと思う。

「ありがとうございます。お疲れさまでした。」
「おう。お前もな。もう閉めていいか?」
「はい。」

 戸締まりを手伝う神井の横顔を眺める。目つきが悪いと評判の神井の顔は、見れば意外と整っている。こうやって、活動を終えて惚けている時の顔は、ただの可愛い後輩だ。だが、ひとたび牙を剥けば、その刺すような視線と論理的な意見、行動と結果を伴った実力、そして容赦のない正論に、誰もがタジタジとなる。この後輩を苦手にしている輩は多い。こいつに盗られる。そんな予感がする。

「どうかしたんですか?」
 部室を施錠し、昇降口への階段を並んで降りていると、怪訝な顔で神井が尋ねた。無意識にため息が出たらしい。