布施は怪訝な顔で少しの間黙っていたが、しばらくするとまた話しだした。

「いやそれより、今日は由里ちゃんが変なんだよ。」
「清水は変だよ。ずっと前から。」

「そうじゃなくて、今朝からお前の方見ては、ため息ばっかりついてるから。喧嘩でもしたのかと思ってたんだけど。」
「へぇ、気付かなかったな。なんだろう。俺とは、別に何も無かったと思うけど。最近はとくに話すこともないし。単にお前の思い過ごしじゃないか?」
「えぇっ。お前ら話もしないのか?」
「だって、別に用ないし。」
「でもでも、お前の方だって、、ピンクの口紅がべったり。。。」
「だから、それは若気の至りなんだって。」

 そうなのだ。あの後、清水は何も変わらなかった。俺がキスしてしまった事も、怒るわけでも、気にする風でもない。あの一件は俺の夢だったのではないかと思える程に。

 多恵の事に関するおせっかいなアドバイスがなくなった分、俺と清水は普通のクラスメイトの関係に近くなった。なんだか変と言えば変なのだが、とにかく平穏なのだから、あえて波風を立てたいとは思わない。