溢れる涙をとどめる事が出来ず、彼女は敗北を認めた敗者のように、下を向いて嗚咽し始めた。俺はなんとか彼女を慰めたいと思いつつ、何をどうしていいのか全く分からず、ひたすらあわあわ言っていた。

 そうだった。多恵は女の子だと言われると、とても悔しそうな顔をする。可愛いと言ってやっても、頑に拒否する。自分が女だということを認めたくないようなのだ。でも実際のところ彼女は女の子以外の何者でもない。
 怒りだしたきっかけにしても、川村が彼女にイタズラをしたからではなく、思わず「女の子のような悲鳴」をあげてしまった自分が悔しくて仕方ないのだろう。

 声を殺して泣く姿が、あまりにも可愛くて、そして可哀想で、でも何をしてやればいいのか分からなくて、俺はただ彼女の頭を撫でた。彼女は涙に濡れた目を隠すように、下を向いて、しくしくと泣き続けた。どうしてあの子は、そんなことにこだわるんだろうか。