「雪!
 なんてこと!
 大丈夫!?」

 ばてばてのオレに気がついて、視界から消えかけていた由香里が戻って来た。

 ほっとして、ケーキ屋の勝手口の壁にずるずると座り込むと。

 由香里が、心配そうに、オレの顔を覗き込んだ。

「……雪……?」

「……そんな顔して戻ってくるなら………逃げん………なよ!」

「………だって雪が追いかけて来てくれるなんて……思ってなくて……」

 近づいた由香里が、オレの視線にあうまでぺたりと座り込んで言った。

 その、あどけない表情に、オレはちょっと笑った。

「……なんだ、そりゃ?」