あたしは、彼とうまくいってなかった

だからって訳じゃないけど

夏休み、入院した奏汰のところに通った

主治医に奏汰のお見舞い行きたいからって

頼んで、夏休みの間

奏汰と一緒の病院に通うことにした

家族のいないさみしさを

あたしは、知っている


入院中の暇さも、時々


孤独感に押しつぶされ、ネガティブになる


高校時代、入院中のあたしの為に


四国から、わざわざ会いに来てくれた


担任


佐山 薫



薫のように、強く


奏汰を元気づけたい



無菌室と廊下で、毎日手話で会話

看護師さんから無理させないでと


言われているから


5分間のタイマーをセット


毎日、伝えることは

〝奏汰がいないとさみしい〟


心から、さみしいと思っているのに

奏汰が、普段使わない言葉

〝ばーか〟


と返してくる


〝ばかですよーー〟

っと変顔すると、笑ってくれる



〝奏汰、早く出て来てよ
待ってるんだよ〟


〝うん、待っててね〟



ピピッと5分の終わりを報せる音


〝また明日くるね〟

〝待ってる〟



どっちが待ってるんだか、わからない


あたしは、グダグダな会話しか出来ないらしい