奏汰の部屋に転がり込んだとき
あたし達は、別々に寝てた
ここに来てから、あたし達はひとつのベッドに抱き合って寝てる
年頃の若い2人だし、雰囲気っていうか
「奏汰、あたし…いいよ?
キスとか、しても…」
「妹にキスする奴いないだろ?」
奏汰は、あたしに好きって言わない
ステージの上じゃないからかな?
おかしいなぁ…
奏汰、あたしのこと好きじゃないのかな
奏汰があまり喋れなくなった
「奏汰!海に行ってくるね!!」
返事は、ない
奏汰は、あたしが貝のおみやげを持って帰ると喜ぶから
必死に探して、帰る
「奏汰!!また、拾ったよ!!」
「あり…がと」
「どういたしまして!!」
「ゆ…う…」
「ん?なぁに?」
「ね…よ…?」
まだ、夜じゃないから
何言ってんの?って思ったけど
あたしは、奏汰の隣に潜り込んだ
「奏汰、あたし砂まみれだった」
気づいて、飛び起きようとした
ギュッ
奏汰が強くあたしを抱きしめた
奏汰?
いつも、ふんわり抱きしめるのに
こんなにぎゅっとされたのは、怒られた時
そんなこと思い出したら、不安になる
「奏汰?」
「ゆ…も、して…」
ゴソゴソと奏汰を抱きしめ返した
「あ…りがと」
「奏汰、ありがとう」
奏汰との最後の会話
奏汰との最後の日
奏汰の心臓の音が聞こえなくなっても
あたしは、しばらく
奏汰から離れられなくて、抱き合っていた
まだ、温かい奏汰の体
「俺にもしものことがあっても、アイマスクは、とるな!
まず、職員さんに連絡して、指示を受けること!!」
奏汰に言われたことをしなくちゃ!!
手を伸ばして、ナースコール押した
すぐに駆けつけてくれた
職員さんに、とりあえず奏汰から離れるように言われた
死後の処置というのをするらしい
「七瀬さん、アイマスクは、はずさないでね!少し、食堂に行ってて」
「はい」
とにかく、取り乱してはいけない
だって、ここには残りの命と戦う人ばかり
泣き叫んで、刺激したらいけない
あたしは、奏汰をきちんと送らなきゃ!!
何度も深呼吸をした
そして
「七瀬さん、そのまま部屋に来て」
いつまで、アイマスクをしたままなの?
奏汰の顔が見たい
あたしは、恐る恐る部屋に戻る