浮かれているあたしに、奏汰が渡したもの

アイマスク


あたしの目はかなり悪くなっている


だけど、アイマスクで訓練はしたから


しなくてもいいのに…


あっ


見られたくないのかな?



色々考えた




あたし達は、携帯の電源を切り


2人でホスピス生活を始める



しぶしぶアイマスクをした



お風呂以外は、外すなと指令を受け



アイマスクで部屋の中を白杖ついて歩く



すぐに慣れたのは、目で部屋を見たから




玄関から部屋までの道のりも



平気だった



だけど、食堂とかお風呂とか

共有スペースは、見てないから


慣れるのに時間が掛かった



時々、障害物に気づかず、盛大に転ぶ


誰も助けてくれない


そうだ


あたしは、自分で生きるために

努力をしなくちゃいけないんだ



奏汰は、あたしの為にここを選んだのかも



奏汰が、体調の良いときには、必ず散歩に連れて行ってくれた


それから、アイマスクのまま、町まで買い物に行った


乗り物の乗り方がわからなかった


電車とホームのすき間に落ちやしないか


バスの段差が思ったより凄くて

スッ転び、恥ずかしい思いもした


奏汰は、立ち上がりあたしが奏汰の手をつなぐまで、何も言わない


「痛かった?」

「大丈夫!でも、恥ずかしかったよ!」

「次は、転けないようにね」

「うん」



次があるんだと期待する



アイマスクをしていても


奏汰の具合が良くないってわかる


ちゃんと食べれてる?


すぐに食器の音が消えるから


「奏汰、海に行きたい」

「うーん、もう少し動けるようになったらね」


それって、奏汰が?

それとも、あたし?


あたしは、アイマスクをしてるけど

ここに来てから、料理の手伝いをさせて貰っている

これは、練習していたから

楽勝!!



余裕があるときと不安な時が

波のように引いては、寄せる



奏汰の音がしないと、恐怖が沸く


「奏汰ぁ!!どこ!?ねぇ!!」


奏汰だって、部屋を空けることがある

だけど、怖くて


パニックになる


アイマスクなんて外してしまいたい


「ダメ!!
それ外したら、強制的にシェアハウスに帰すから」



低い声色は、奏汰が本気の時



「やだぁ!!奏汰といる!!」


奏汰に必死に抱きつく



何度も不安に押しつぶされた