だいたい、風斗があたしを好きになるなんてありえないもん。


それに、恋愛なんて面倒くさいと思ってるに決まってる。


昨日、瀬川さんにもデートするなら寝てる方が良いって言ってたくらいだし。



「あたしたちはただの幼なじみだよ?風斗は絶対そんな目で見てないよ。それに恋愛に興味なさそうだし」



うん、きっとそう。


好きならずっと一緒にいたいって思うもんでしょ?


昨日、クレープを食べに付き合ってくれなかったもん。


それにあんなのは昨日だけじゃない。


断られるのはしょっちゅうで、付き合ってくれたことの方が少ないんだから。


本当に気が向いた時にしか来てくれないんだもん。



「うーん。でもまぁ、あの風斗君と付き合えるのは美央くらいしかいないんだからさ。他の女の子だったら、きっと3日も持たないと思うよ」



美海はあたしの言葉を否定することなく苦笑する。


美海の笑顔は天使みたいでホントに可愛い。


でも、言ってることは全部的が外れてる。



「ウワサをすれば、だね!風斗君来たよ」



教室のドアの方にチラッと目を向けた美海は、そのすぐあとにあたしの目を見てイタズラッ子のように笑う。



風斗は眠そうにあくびを噛み殺しながら、寝ぐせのついた黒髪を揺らしてダルそうに自分の席に座った。



「そろそろチャイムが鳴るね。戻るよ」



予鈴が鳴りそうだったので、あたしもそのまま席に戻る。


そういえば!


昨日、席替えをしたんだ。


席が変わっただけで、教室の中がいつもと違って新鮮だ。


あたしの席は風斗の隣だけど、風斗はいつものようにすでに机に突っ伏して寝ていた。



まったくもう!


これじゃあ、せっかく隣の席になった意味がないじゃん。