「だーかーらー、美央には色気が足りないんだって!」
次の日。
学校に行くと、昨日のことを高校に入って仲良くなった親友の美海(みみ)に話した。
美海とあたしは地味でもなければ派手でもないけど、クラスでは目立つ部類に入っている。
それは美海がスラッとした美人さんだから、必然的に一緒にいるあたしまで目立ってしまうってわけ。
背が高くて色白で、ぱっちりした綺麗な二重まぶたが特徴的な美海。
制服をピシッと着てるのに真面目ちゃんに見えないのは、雰囲気とかオーラのせいかな?
むしろ、ピシッと着ててこんなに似合う人は他にいないと思う。
今は秋だから、学校指定の物じゃないベージュのカーディガンを羽織っている。
伸びた裾の隙間から覗く細い指が、細くて綺麗で女の子って感じがする。
「色気があったって、風斗はなびかないと思う」
美海はクラスの中であたしの気持ちを知る唯一の人物。
だからこそ、包み隠さずに何でも話せる仲なんだ。
「そんなことないでしょ。美央に色気を出されたら、万年寝太郎の風斗君でも黙ってないと思うよー?」
美海はクスッと笑ったけど、とてもそんな風に思えない。
「だって!アトラクションに並ぶのが面倒くさいって言って遠足を休むような奴だよ?
中学の修学旅行なんて、自由行動の日に歩き回るのがダルいからってホテルで寝てたんだよ?せっかく同じ班だったのにさー。
運動会とか体育の授業でも、本気で走ってるところなんて見たことないし」
とにかく風斗は何に対しても本気を出さない面倒くさがり屋。
これはもう、天から与えられた性格だからあたしが言ったところでどうにもならない。
寝るのが趣味なのかってくらい、いつでもどこでも寝てるし。
「そうだけど、美央が本気でぶつかったら風斗君は喜ぶと思うけどなー」
美海の声に聞こえないフリをする。
だって、やっぱりそんな風には思えないから。