足音がこっちに向かって来る。
や、やばい。
このままだと風斗に気付かれちゃう。
早く立ち去らなきゃ!
身を翻そうとするとーー。
ーーガサッ
落ち葉を踏んでしまい、辺りに大きな音が響いた。
げっ!
やばっ!
「美央(みお)?」
ーードキン
時すでに遅し。
風斗に見つかってしまった。
一見爽やかに見える風斗は、ふわふわの黒髪をなびかせながら近付いて来る。
だらしなくはないけどピシッと着ているわけでもない制服の着こなしは、スタイルが良くて背が高いせいかすごくオシャレ。
腰で履いたズボンに、第2ボタンまで開けられたカッターシャツ。
蛍光オレンジのラインが入ったスニーカーを履いているのが風斗の定番。
「何してんだよ、こんなところで」
「え?いや……あの、偶然通りかかってさー!声がするなーと思って……っそれで」
とっさに愛想笑いを浮かべる。
気になって覗いてたなんて、口が裂けても言えない。
「覗いてたんだ?」
「…………」
うっ。
まっすぐな風斗の目はあたしの心を見透かしているようで、たちまち言い訳なんて出来なくなる。
気まずくなってうつむこうとすると、あたしの横を通りすぎて風斗はスタスタ歩き出した。
その光景を見ていることしか出来なくて、思わず遠くなる風斗の背中を見つめる。
「何やってんだよ、置いてくぞ」
風斗は途中で振り返ると、無表情でそう口にした。