「ふ、風斗……っ」
どこに向かって歩いているのかわからない風斗に恐る恐る声をかける。
掴まれた腕が熱くて、どうにかなっちゃいそう。
「ねぇ、さっきの……どういう意味?」
ちゃんと言ってよ。
あたしと2人で行きたいって、どういう意味?
深い意味なんてないの?
だけど、期待しちゃうよ。
そんな風に言われたら、嫌でも期待しちゃうよ。
「あたしは……好きだよ、風斗のことが。ずっと前から大好きだったよ」
想いが溢れて、つい口から出てしまった。
もう隠しきれない。
関係が壊れることになっても、振られてもいい。
こんなに必死な風斗を見て、期待せずにはいられないよ。
「バーカ。そんなの昔っから知ってるし」
風斗はあたしよりも前を歩いているから顔は見えない。
だけど耳の後ろが真っ赤になっているのがわかった。
「し、知ってるって……なんで?」
どうして?
「美央はわかりやすいからな。ってか、隠してたつもりかよ?」
う、うそ。
風斗にバレてたの?
信じられない。
だって、そんなことに興味がなさそうだったのに。
「俺、面倒くさがりで気分屋だけどさ」
うん、知ってるよ。
いつも振り回されて来たんだもん。
「美央の為ならたまには寝る時間も惜しんで、デートの時間を作ってやれるよ」
「う、うん?」
たまには……?
上から目線なのが気になるけど、黙って風斗の言葉に耳を傾ける。
「休みの日も、気が向いたらデートしてやる」
「…………」
気が向いたらかい!
突っ込みたくなる気持ちを堪えて押し黙る。
風斗は一体、あたしをなんだと思っているんだろう。
「好きだよ、美央」
いつも無気力な風斗の、抑揚のない声が耳に届く。
だけどあたしには伝わって来た。
風斗がホンキで言ってくれてるってことが。
「毎日メールしてくれる?」
「気が向いたら」
「電話もしたい」
「それなら、会った方が手っ取り早いだろ。気が向いたら会ってやるよ」
「なにそれっ、ワガママ。たまには……風斗からも誘ってくれる?」
「うーん、まぁ気が向いたらな」
「…………」
「ったく、仕方ないな。じゃあひとまず、クレープでも食いに行く?」
「うんっ!行く!」
無気力系男子がホンキを出しても
風斗は風斗のままなのでした。
でも、それも悪くはないかな。
あたしのことを好きって言ってくれたから。
そのままの風斗が大好きだよ。
【fin】