そしてあたしもーー。
そんな風斗に想いを寄せる内の一人。
風斗とは生まれた時から一緒で、いわゆる幼なじみっていう関係に当たる。
高校に入ってから中学の時以上にモテ始めた風斗。
学校内で可愛いと言われている女子のほとんどが、風斗に告白して玉砕したらしいことをウワサで聞いた。
いつ彼女が出来てもおかしくないから、風斗のことを耳にするたびに不安でたまらない。
「好きになってもらえるように努力するよ!風斗君の好みの女の子になれるように頑張るから、お願い……っ」
さっきよりも大きくなったその声は、緊張からなのか少し震えている。
「瀬川(せがわ)のために休日返上してデートするとか、面倒くさくてムリだから。ごめんね」
「そ、そんな……っで、でも!それでもいいから」
「んー。でも、瀬川のために時間作れないしさ。だったら家で寝てる方が良いし」
「そ……っそれでもいいよ!会えなくてもいいからっ」
「そんなの、付き合ってるとは言わないだろ」
「そ、それは……っ」
泣きそうな瀬川さんの声に耳をかさず、風斗は抑揚のない声でごもっともなことを言う。
それにしても。
もう少し、言い方ってもんがあるでしょ。
なんて思いつつ、断ってくれてホッとしている自分がどこかにいた。
人の不幸を喜ぶなんて最低だよね。
だけど、風斗に彼女が出来るなんて絶対に嫌。
「それに、俺は多分瀬川を好きになることはないと思う」
「そ、そんなの、付き合ってみなきゃわかんないじゃん……っ」
瀬川さんの涙声が聞こえて胸がキリキリ痛かった。
「んー、でも俺のカンは当たるし」
「カ、カン?」
「うん。好きにならないっていうカン」
こんなにズバッと言われたら、さすがのあたしでも立ち直れないかもしれない。
それなのに、瀬川さんは本当にすごいや。
それほど風斗のことが好きなんだね。
「俺、すぐ泣く子は面倒だからムリだよ。ごめんね」
「……っ」
淡々とした風斗の声に迷いは一切なくて、瀬川さんが思いっきり言葉に詰まった。