瀬川さん……まだ風斗のことが好きなんだ。
赤い顔をしてるってことは、そういうことなんだよね?
目立つ場所で話し込んでいる2人は、周囲からの注目の的。
あたしも気になってソワソワしてしまう。
「ふ、風斗君のこと……やっぱり諦められないから。どうしても彼女になりたいの!ダメ……かな?」
胸がギュッと締め付けられる。
あんなにひどいことを言われたのに、どうしてそこまでぶつかれるの?
すごいな。
あたしだったら耐えられないよ。
「行こう、住田さん」
上靴から外履に履き替えると、佐古君の手があたしの腕を引っ張った。
「あ、ちょ、ちょっと。佐古君」
いきなり強引になった佐古君に戸惑いを隠せない。
だけどその手を振り払うことも出来なくて、あたしは引っ張られるがまま小走りに付いて行くしかなかった。
風斗と瀬川さんの前を通り過ぎようとしたその瞬間ーー。
こっちを向いた風斗と視線が重なった。
ドキンと高鳴る鼓動。
一瞬で全身が熱くなる。
「瀬川、ごめん。俺、どれだけ言われても瀬川とは付き合えない。俺ーーホントは」
佐古君に引っ張られながらでは、そこまでしか聞こえなかった。
あっという間に昇降口を抜けて校門にたどり着く。
まるで何かから逃げるように、あたしの腕を引っ張る佐古君。
「さ、佐古君……!手、痛いよ」
「え?あ、ご、ごめん……!つい」
戸惑うように瞳を揺らし、手の力がスッと抜ける。
「どうしたの?何かあった?」
「いや、住田さんがあいつのところに行くんじゃないかって考えたら気が気じゃなくて……」
「え?あいつのところ?」
わけがわからなくて首を傾げる。
佐古君が何を言っているのかさっぱりわからない。