「…………」
あたしが聞いても風斗は何も答えない。
ただじっと、まっすぐにあたしを見ているだけ。
「ホントにどうしたの?」
「…………」
「おーい」
「…………」
なんなんだよ!!
せっかく話しかけてあげたのに、そっちがムシするならあたしだってホントにもう知らないんだからっ。
それでもなぜか、見られていると思うとドキドキして落ち着かなくて全身が熱くなっていく。
惚れたもん負けって言葉があるけど、ホントにその通りだよ。
「ちょっとジュース買って来る」
「一緒に行こっか?」
「いいよ、美海は食べてて」
まだ半分くらい残っていたお弁当箱のフタを閉じて立ち上がる。
そして、風斗の方は一切見ないようにして教室を出た。
「はぁ。ホント……やだ」
なんであたしがこんなにも悩まされなきゃいけないの?
勝手なことを言ってるのは風斗じゃん。
バカ。
バカッ。
……バーカ。
1階にある自販機の前まで来た時、ブレザーのポケットに入っていた小銭を取り出す。
そして投げやりになりながら1枚ずつ自販機に入れた。
「うそっ、10円足りない……」
ちゃんと数えて持って来たつもりだったのに。
最悪だよ……。
ホントついてない。
こんな日は何をやってもダメなのかも。
「どうかしたの?住田さん」
「え?あ……」
さ、佐古君。