1時間目が終わると、風斗は何事もなかったかのように教室に戻って来た。
眠そうにあくびをしてたから、きっとどこかで寝てたんだと思う。
風斗にとって、所詮あたしはそんな存在。
寝たら忘れられるような、そんな存在なんだ。
特に話しかけて来ることもなく、あたしから話しかけることもなく。
お昼休みを美海と過ごした。
食欲なんてなかったけど、食べなかったら食べなかったで色々突っ込まれるから無理やり口に放り込む。
風斗のことなんてもう知らない。
ウインナーを頬張りながら、隣の席にいる風斗の顔をちらっと見る。
風斗はいつも通り、黙々とお弁当を頬張っていた。
そう。
あたしのことなんて、まったく気にするそぶりもなく。
「はぁ」
「なーに?ため息なんて吐いちゃって」
「別に何もないよ」
からかうように見てくる美海が嫌だ。
あたしと風斗の間に何かあったと思ってるのかもしれないけど、そんなのは期待外れなんだからね。
むしろ、悪くなったんだし。
再びため息を吐きかけた時、美海がクスッと笑ったのがわかった。
まったく。
他人事だと思ってさ。
「風斗君、さっきからチラチラ美央のこと気にしてるよ」
「そんなわけないじゃん。風斗があたしを気にするなんて」
現にいつものようにお弁当を頬張ってるし。
「でも、ほら」
見てみなよ、とでも言いたげな顔で美海が風斗に視線を送る。
それにつられて思わず目を向けると、お箸を手にぼんやりしている風斗と目が合った。
「な、なに?」
そんなにジロジロ見られたら調子が狂うじゃん。