「誰でも良いわけないじゃん」
あたしは風斗と行きたかったんだよ。
風斗のことが好きで、長く一緒にいたいと思ったから。
それなのに、こんな言い方ってないよ。
「断ったのは風斗のくせに……悪者扱いされる意味がわかんない」
昨日だけじゃない。
いつも風斗に振り回されてばっかりなんだから。
「ふーん、そう。じゃあ勝手にすれば?」
なんのためらいもなくパッと離れた手。
何となく不機嫌なその声と突き離すような言葉に、胸がキリッと痛んだ。
「美央が誰とどこに行こうが、俺には関係ないから」
最後にそう追い打ちをかけられて、悲しみとか寂しさとかショックが入り交じり唇をグッと噛み締めた。
そう……だよね。
風斗はやっぱり、あたしのことなんてそんな風にしか思ってないんだ。
「勝手にするよ……っ!風斗のバカッ!」
涙がこぼれそうになって、うつむいたまま走ってコンピューター室を出た。
悠長に廊下を歩けるはずもなく、そのままの足で階段を駆け登る。
バカバカ!
風斗のバカ!
もう知らないんだからっ!
何とか気持ちを落ち着かせ、教室に戻った。
あたしを連れ出した風斗のことを見ていたのか、美海が「どうだったー?」とニヤニヤしながら聞いて来たけど適当に交わして。
席に戻ったあと、佐古君に「行く」とだけ伝えて机に突っ伏した。