「ふ、風斗(ふうと)君のことが好きなの!良かったら、私と付き合って下さいっ!」
放課後の体育館裏で、偶然告白現場に遭遇した。
思わず立ち止まってしまったのは、告白してる女の子があたしの大好きな人の名前を呼んだから。
校舎の影に身を潜めて聞き耳を立てる。
委員会の仕事ですっかり遅くなってしまったから、もう人は残っていないと思っていた。
それなのにーー。
オレンジ色に染まる体育館裏に伸びる2つの影を見つめながら、胸の辺りで拳をギュッと握る。
「お、お願い……!私、風斗君のことが本当に好きで」
何も答えない風斗に女の子が執拗に攻める。
相当切羽詰まっているのか、女の子の声は今にも泣き出しそうなほど。
ーーズキン
胸が痛い。
風斗はなんて返事をするのかな。
「俺、付き合うとかよくわかんないんだよね」
聞こえたのは、いつもの抑揚のない淡々とした声。
何事にも興味がなくてやる気のない風斗は、思ったことや感情をそのまま口にしてしまう。
ストレートで飾らないのがいいところではあるんだけど。
キツいことも悪びれなく真顔でズバッと言うから、女子の間では『冷たい』とか『クール』なんて言われている。
それにーー。
嬉しかったり楽しかったりしても表情にまったく出ないから、余計にそう見えやすいのかもしれない。
はしゃぐタイプでもないし、ただ静かにその場にいるだけ。
あんまり喋らないけど、誰もが認めるほどバツグンの容姿と存在感を放っているから、人の目を惹きつける。
だから風斗は学年でも結構モテている方なんだ。
告白されるのもしょっちゅうのこと。