それなのに、僕の戦闘機に異常が見られたという。
その晩、釘宮が僕の部屋に訪れた。
「悪い。寝ていたか?」
「いえ」
僕はベッドに座ったまま釘宮を見上げていった。
釘宮が僕の前を通りすぎ、ディスクの椅子に腰を掛ける。
「戦闘機の話だ」
「はい」
「簡単に説明すれば推力重量比の不安定」
「どうしてですか?」
僕は何故そんなことが起きてしまったのか、気になり前のめりに釘宮を覗き込んだ。
「撃たれただろ?」
彼は僕を見ずに前を向いたまま聞く。
「…いえ、そんなことは」
「まぁいい。さっきエンジンオイル漏れに機体重量が増加していた」
僕は黙って釘宮の次の話を待った。
「エンジン推力を機体重量で割った値が推力重量比。わかるな?」
僕は頷く。
「大きいほど加速運動、上昇性能が高くなる。どうだった?」
釘宮がやっと僕の方を振り向いて尋ねた。
「確かに、ちょっとは感じましたが、そんなに気にしていませんでした。それに、休暇開けだったので自分の感覚が狂ってしまったんではと…」
消極的になってしまった僕は、膝のズボンを握り締めていた。
「なるほどな。まぁたいした誤差ではなかったし…」
彼はその後の言葉を躊躇っているように思えた。
「しかし…予想以上の腕前だ。確実だった」
僕は彼が最後に言ったことの意味がよくわからなかった。
でも確かなのは敵機を見縊っていたこと。