格納庫まで機体を移動して下りると、釘宮夕凪がこちらを向いて微笑んでいた。

「何か僕の顔についていますか?」
手袋を脱ぎながら聞く。

「いや、ちょっとな」
釘宮は煙草を吐きながら、僕に近づいてくる。

「これですか?」
戦闘機に指を差しながら尋ねた。

「気付いてたか」

「当たり前ですよ。乗ってるんですから」

「だな」

「どこですか?やっぱりエンジンでしょうか」
僕も煙草をズボンのポケットから取出し、火をつけた。

「他にもあるだろう」
右手で髪の毛をくしゃくしゃにしながら、笑って答えた。

「いつまでかかりますか?」

「今日中には終わらせるよ。明日にはもう乗れる」

「そうですか」
僕は軽く頭を下げて、釘宮の横を通って格納庫を出た。


そして宿舎までの道のりを、煙草を吸いながら考えていた。
いつ何処でやられたんだろう。
気付いていなかった。
完璧だった僕の操縦の何処にミスがあったのだろうか。
今日?
いや、それともずっと前?
ならもっと早く釘宮が気付いていたはずだ。
休暇中の時か?

それでも乗る前に気付く。

やっぱり今日か…?