「街に出たのは、これで2回目」
菊永は体を戻して、前を向いたまま答えた。

「僕も」

また沈黙。

この空気が嫌なのか、菊永は眉間にシワを寄せて僕を睨んだ。

「何?」

「別に…悠斗って対人恐怖症?」

「え?」
僕は思わず笑ってしまった。
「対人恐怖症って何?」
笑いながら言ったから、ちゃんと聞こえているかわからない。

少し間が合ってから菊永も笑いだした。
「やっぱあんた面白い」
右手で僕の肩を叩いた。
「対人恐怖症じゃないなら、なんなの?」

「凡人」
口元が緩みながらも答えた。

「はぁ?あんたみたいな口数の少ない男はじめて、むしろ人に共感しないでしょ?」

「しないかな…」

「何が楽しいの?」

「さぁ」
僕は首を傾げて菊永を見た。
それにたいしてまた菊永は笑った。

車が駐車場に止まった。
目的地についたところで、僕たちの会話も終わった。