「悠斗は、何の為に戦ってる?」
いきなり表情が冷たくなって、真面目に話しはじめた。
「俺は、元々頭がよかったから、この戦争には反対だったんだが」
僕はあまりにも普通に自分のことを頭が良いと言ったから、思わず笑ってしまった。
「おい!今真剣な話してんだぞ」
倉田は軽く僕に怒り忠告する。
「すいません。つい」
「まぁいい」
ちょっと倉田も笑って話を続ける。
「俺、昔はあっち派だったんだ。時田の下で働いていた…少しの間だけな。でも…」
その先を倉田は言わずに沈黙が続いて、僕は暗くなっていく空を見て考えた。
何の為に戦ってる?
今までそんなこと考えもしなかった。
ただ任務を遂行しているだけ。
失敗は許されない。
自分の為でも国の為でも、誰かの為でもない。
何となく生きて、何となく戦闘機に乗って、何となく撃って…墜ちていくのを見る。
それが日常で、疑問に思ったことなんてなかった。
何度この右手で人を殺したのだろうか。
向こうは何故、命をかけてまで立ち向かってくるのか。
そこまでして守りたいものってなんだろう。