どのくらい逃げているだろうか。
意識も朦朧としてきたか。
まだ、まだだ。
ここで終わるわけにはいかない。
もう少し。もう少し相手と距離を広げなければ。
難しいか。
いや、できる。
どこからかわからないが、自信がわいてきた。
その理由はおそらく、今までの経験から言えることだろう。
いける。
まだ全然いける。
また速度を上げる。
確かに速度は上がっている。
それが確認できるのは、黒いスーツの男たちとの距離が、さっきより広がったからだろう。
しかし、僕が本当に加速したのかは正確には証明できない。
相手が疲れて遅くなっただけかもしれない。
また考えてしまった。
自分が危険な状況に陥っているにも関わらず、こんなくだらないことが気になってしまうなんて。
やはり愚かだよ。
人間という生物は。
僕も君もね。
僕はだんだんおもしろくなってきて、笑いがこぼれてしまった。
なにがおもしろいかなんて問うな。
それは禁句だ。