それは、つきあって1年くらいの頃のこと。


二人で花火大会に行ったとき。私は、同性の中で最も尊敬する事になる人と出会った事を思い出した。



あの混みあう中をよくもまあ車椅子で行く気になったなとは思うが秀弥の配慮なのか
ほとんど人混みに入ることなく花火の見えるいちにいった。

それは、彼の優しさだったのかもしれない


私は、祭りやなんかが好きではない。  

迷惑をかけるというのもあるがたまに、直接言ってくる輩がいるからだ。

その時も案の定そうで、

酔っ払ったおじさんに「おい!そこの障害者!お前みたいな税金泥棒がこんなところに来ていたら普通の人たちに、迷惑をかけるという事がわからんのか!!恥を知れ」
と罵られた。

生憎、秀弥のいなかった時で
周りからは、クスクスと笑い声が聞こえたり、かわいそうと云う言葉が聞こえたが誰も助けてはくれないのだ。

「すみません。」

私がそう言おうとすると、

どこからか、少し訛りの入った女の子の声が聞こえた。

「おい、そこの糞やろう。てめぇーだよ。
今すぐあの方に土下座して謝ってこいや。
さっきから聞いてりゃーよ税金泥棒?
あの人だって税金納めとるわ!!!!
アホか!あとなぁこんなとこに来たら
普通の人に迷惑かけるだぁ?
かばちたれとんじゃねーぞぉぉぉぉぉ!
(屁理屈いってんじゃねーぞ!)」

その少女は凄い剣幕で中年男性を叱りつけていた。

当人の私もあっけにとられていた。

「普通の人ってなんだよ?お前の言う普通の人ってなにかってきーとるじゃろーが!
はよ、答えや。」

少女が怒鳴るとその凄みに圧倒され
中年男性は
「ふ、普通ってのは、当たり前のことを当たり前にできる人の事だ!人に迷惑をかけない人のことだ!」

と叫んでいた。

「ほーか。で?お前の言う、当たり前とは
こんな、大勢の前で人を罵ることなん?
なら、車椅子に乗っとるんは当たり前のことじゃないん?違うじゃろ!100人中99人が
してる事が全て正しいんか?違うよな、
1人だけ、違っとったらそれは、異常か?
違うよな、みんなそれぞれが違う、もんもっとるわ!それが、この人の場合は車椅子に座るって事だっただけじゃ!当たり前なんじゃーや!そらから、誰にも迷惑かけんで生きていくなんて無理じゃろ。おっさんがいまこうしてることでこの人に迷惑をかけとるんよ。ほら、みーんなちーとも変わりゃせんじゃろが。わかったか!!
この糞あほんだらぁが!ほんま、次かばちたれとった、しごーしたるど!(次屁理屈いってたら、しばくぞ!)」

少女が怒鳴り散らしてその中年男性は、
去っていった。

その姿を蔑むような目で見て少女はこちらを向いた。

「大丈夫じゃった?ほんまに!なんであないな人間がおるんじゃろか?それも、個性なんじゃろなぁ。(ニカッ)」

少女は、そういって笑っていた。

素直にかっこいいと思った。

「あ、ありがとう。えっと名前…………。」

そう聞くと
          コンノ  ヒトナ  
「名前?あぁ!うちは紺野 仁那 高3よろしくね。」

彼女は紺野 人那と名乗り高3といった。

「私は、立川 幸与。高3です。」

私達は、そう言って別れた。

あれきり連絡もしてないしあってもいない。


けれど、あの夏の日に見た彼女が私の一生外尊敬する人なのだ。