「バイバーイ!」

「また明日ね~。」


慌ただしい放課後の教室に、まばらになってゆく生徒達。

あたしはぼんやりとベランダから暮れてゆく外を眺めていた。



今日は朝の一件から、一度も神楽くんと話せなかったな。

なんて、やっぱりあたしの頭の中は彼が中心で。



溜め息ばかりが心を塗りつぶしていく。



そんな時
「日和、」と呼ぶ声に振り返ると、玲が眉を下げてベランダに向かってきた。



「帰らないの?」

「…うん、もう少し居ようかな。」

「そっか…。」


ギッ、と音を立てたベランダの柵に、二人で寄り掛かって外を見る。


少しずつ太陽が隠れ始めて、無口な風があたしと玲の髪を撫でた。


「……玲。」

先に口を開いたのはあたし。



「うん。」

と、玲は前を見据えたまま返事をした。